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null バルサが、かすれ声でつぶやくと、男が、はっと目をさました。黒にちかい褐色の肌に、ぼさぼさの茶色い髪。目尻のしわと、やわらかい光をたたえた目。いかにも、人がよさそうな、二十七、八の男だった。 「おう。目がさめたか。」 「……わたし、また、ジグロに負けたの?」  タンダの目が、ちょっと大きくなった。 「おまえ、大怪我をしたんだよ。そのせいで、記憶が混乱してるんだ。――思いだしてみろ。ジグロは、ずっとむかしにいってしまっただろう? おれたちでみとったんじゃないか。」  バルサは目をほそめた。からだの痛みが、バルサを少女のころへひきもどしていたのだ。養父《ようふ》のジグロにしごかれ、さんざんたたきのめされては、気をうしなったあのころへ。  おそろしいほどに強く、きびしかったが、反面、殺される運命にあったバルサをたすけて、かわいがってそだててくれるようなやさしさをもっていた養父の面影が、目のうらにうかび、つぎに、その死を思いだした。バルサの目に涙がうかんだ。 「ああ、そうだったね。――ジグロは死んだんだっけ。」  バルサは、タンダがわたしてくれたお椀から、のどをならして水を飲んだ。  そのとき、少年がタンダのわきににじりよって、心配そうにバルサをのぞきこんだ。 「……チャ、グム?」  チャグムをみたとたん、すべての記憶が、どっとおしよせてきた。 「たいへんだ。――わたしは、どのくらい気をうしなってたんだい? タンダ、あんたはしらないだろうけど、この子はおわれてて……。」  タンダが手をあげて、バルサをおさえた。 「だいじょうぶだ。しってる。この子はなかなか気丈で頭がいいぞ。あの夜の山のなかを、すり傷だらけになって、おれのところにころげこんできたときには、びっくりしたがね。おわれていることは、まっさきに話してくれた。だから、おまえをたすけにいくあいだも、ちゃんと気をくばったよ。だいじょうぶ。人の気配はなかったし、血のあとをたどられないようにしまつもした。」  バルサは、ため息をつきながらも、くちびるをゆがめた。 「ほんとうに、だいじょうぶかねぇ。あんたはむかしっから、武術のほうはからっきしだったから。気配を読めなかったんじゃ、ないだろうね。」 「ばか。気配を読むことにかんしては、おまえら武人よりうえだよ。だいたい、おれは、おまえの腹を十七針も縫って、左腕も八針縫ってやったんだぞ。左肩の傷もちゃんときれいにしてやったしな。ののしるまえに、感謝しろ。