ルイヴィトンダミエグラフィットジッピーウォレット
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[ルイヴィトン]LOUIS VUITTON ダミエ グラフィット ジッピーウオレット・ヴェルティカル N63095 [並行輸入品]
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[ルイヴィトン]LOUIS VUITTON ダミエ グラフィット ジッピーウオレット・ヴェルティカル N63095 [並行輸入品] 
null 都会にもまだ虫がいるということの反語のようだが、むかしなら山、好適な採集地といってよい避暑地くらいの場所では、実に虫が少なくなってしまった。たとえば箱根、軽井沢といったところである。かつては夜の訪れと共に、灯に集まる蛾《が》がガラス戸のむこうに群をなしていたのに、今は数えるほどだ。その減り具合は、都会のそれとどちらが顕著だかわからない。  もちろんそこでは、カブトムシをロハで捕えることもできる。しかし多くの子供は、別荘の庭の誘蛾燈にいたカブトムシを見つけ、キュウリをやって飼っておくという程度で、本来はカブトムシはナラなどの樹液に集まるという観察をした子供がどれだけいることか。またその幼虫は?山に行くことができたから立派な宿題ができるとは限らない。  ともあれ、かつて虫ケラと呼ばれて軽蔑《けいべつ》されていた一部の虫が、その数の減少によって商品価値が出てきた。人間はどんどんふえる。この伝でゆくと、人間が交通事故で死亡して、その賠償金がカブトムシ一匹という時代がくるかも知れない。 [#改ページ]    糸巻のタンク  プラモデルの模型をこしらえるのが流行している。飛行機でも船でも、実に精巧にできていて、これに熱中するのは、私にも充分わかるつもりだ。  しかし、私の子供のころは、いまのようなプラモデルはなかったし、オモチャにしても、電池で動くのではなく、せいぜいゼンマイであった。そのかわり、子供たちは子供たちで工夫をして、自家製のオモチャで遊んだりした。その一つの例として、糸巻製のタンクのことを書いておく。  糸巻はミシン糸の木製の糸巻である。これは両側に輪があるから、そのままころがすこともできるが、これを戦車に見たて、いかにも戦車らしい動きようにしたのは、当時の子供のせいいっぱいの知恵であったろう。  まず両車輪にナイフでギザギザをつけ、これがキャタピラとなる。動力は輪ゴムである。何本かの輪ゴムを、糸巻にあいている軸穴に通す。片端は動かぬよう、マッチ棒の上からロウソクのロウをたらして固める。もう一方の端から出た輪ゴムは割箸《わりばし》の先につけ、この割箸をぐるぐるまわして輪ゴムを巻くのである。  これだけでも戦車は動くことは動く。しかし、糸巻と割箸との摩擦が多く、スムーズには動かない。そこで、両者の間に、ロウソクを輪切りにし、穴をあけたものを入れるのがコツであり、秘伝である。  こうして何台ものタンクを作ってみると、それぞれ性能に差があることがわかる。輪ゴムを何本入れるか、ロウソクの厚さはどのくらいか、また割箸の長さによっても、スピードもちがえば、航続距離もちがってくる。なかにはキチガイじみて早く走るが、たちまちストップしてしまうのもある。したがって、戦車らしくしずしずと、しかも長く動くやつを作りだせるまでには、かなりの修練が要る。  私は十台ものタンクのゴムを巻き、部屋のむこうの端から、こちらの陣地にむけて発車させると、大急ぎで陣地にもどってきて、やはり手製の割箸で作ったゴム鉄砲(輪ゴムをとばすやつ)で、これら戦車隊を迎え撃つ遊びに夢中になった。  小型の糸巻のタンクは、いわば軽戦車で、動きも早く、真っ先にやってくるから、まずこれを狙い撃つ。ゴム鉄砲が当るとひっくり返りもしないが、進む方角が横むきになってしまうから、まずこれは撃破ということになる。一方、でっかい糸巻の重戦車は、ゆうゆうとやってきて、キャタピラのせいで途中においた障害物をのりこえ、輪ゴムくらい当ってもなおかつ進撃してくるから横っちょのキャタピラを慎重に狙うようにしなければならぬ。  そして戦車隊をすべて撃退するか、ついに一台か二台、わが陣地を突破されるか、まことにスリルがあっておもしろかったものだ。  いまの子供は、既製品を買ってきて、もっとスリルに富んだ遊びをするだろう。しかし、この糸巻のタンクにしろ、ゴム鉄砲にしろ、私たちは自分らで作り、いろいろ考えて工夫をこらし、その性能を改善していったものだ。そこに、こうした粗末なオモチャの遊びのなかにも、なんともいえぬ喜びがあったようだ。