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null「しっかりして。」 「なに、腹が減って、ふらつくだけだ。」 「痩せ我慢はもう結構ですよ。」  けれども、痩せ我慢ではなかった。多少足許《あしもと》が頼りないものの、ほかにこれといった自覚症状もない。自分の躯が、医師が動顛《どうてん》するほどの危険を孕《はら》んでいるとは思えなかった。 「あの血圧計、狂ってるんじゃないのか。」 「まさか……先生、首をひねってらっしたわよ、あんなに血圧が高いのによく平気でいられるって。普通では考えられないことですって。」 「人はそう医学書通りにはいかないってことさ。だけど、菱田さんも齢をとったな。医者があんなにあわてちゃいけない。」 「そんなふうにいったらいけないわ、心配してくだすってるのに。誰だってびっくりするでしょう、下駄履きで煙草をぷかぷかさせながらやってきた人の血圧が二百以上もあるんだから。」  余計なことはよせというのに、妻は握った私の腕を胸に抱え込んだまま、車の切れ間をねらって道のむこう側へ渡った。下校途中のセーラー服があやうく突き当りそうになり、いい齢をして、という目の色で身を寄せ合った私たちの傍《かたわら》をすり抜けていった。  次女の車に乗り込むと、妻はようやく腕を放した。次女はうしろから急《せ》き立てるせっかちなクラクションに顔をしかめながら車を出した。 「ちっとも病人らしく見えないけど、倒れそうなの?」 「いや、お母さんが、倒れそうだと思っているだけだよ。俺《おれ》は大丈夫だから、前をよく見てゆっくりやってくれ。」 「でも、そうゆっくりもしていられないの。できるだけ急いでね。」  妻がそういうので、次女は困ったように笑った。道はそろそろ夕方の混雑がはじまっていた。 「急げといわれても、これじゃあ救急車みたいにはいかないわ。一本道だから、流れに乗ってるしかないんだけど。」 「それでいいんだ。こっちは病人じゃないんだから。自然の流れに乗ってるのが、いちばんいい。」  妻は呆《あき》れたような顔で私を見たが、なにもいわなかった。しばらくしてから、 「どのくらい入院するのかしら。」