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null「だから外へ出て視野をひろげてきなさいって、都博にゆくことを勧められたの。ちょうど欠員の募集があって、推薦状を書いてくれた」 「応募者の競争はなかったの?」 「あったよ。でも、わたしは有利な材料を一つ持ってたのよ」  遥子が言うと、橋本直美は作業の手をとめて、手の甲で顎《あご》の横をこすりながら訊《き》いた。 「どんなこと」 「わたしの父親もむかし都博に勤めてたの」 「へえ、それは強みよね」作業を再開し、手を動かしながら言った。「じゃあ、いまの幹部のなかには、お父さんの部下だった人なんかもいるんだ」 「もしそうなら目をかけてもらえて少しはトクしたかもしれないけど、残念ながらそれはなし。だって、父がいたのは五十年くらい前のことだから」  橋本直美は遥子の顔をみた。 「え、江馬さんて、いくつだっけ?」 「失礼ね。直美さんとおんなじよ。わたし、父が四十八歳のときの子供なの。父が都博にいたのは二十代の頃の話」 「あ、なるほど」 「で、退職したあと、仙台に帰って実家のお寺を継《つ》いだの」 「お父さんはどこの部におられたの? 学芸部?」 「そう。戦争中から勤めてたみたい。帝室博物館て呼ばれてた時代から」 「兵隊には行かなかったの?」 「片目を失明してたの、学生時代のけが[#「けが」に傍点]がもとで。それで徴兵はまぬがれたらしいの」 「ふうん。で、いまもお元気なの?」