ルイヴィトンエピジッピーウォレットノワール
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null「体一面に黄《き》な粉《こ》がまぶされている。安倍川で黄な粉をかけられてるんだから、これは餠屋さんの争いがからんでいると思うじゃないか」  錦木氏がいう。 「思いますかね」 「男は心臓が弱かった。死因は心臓|麻痺《まひ》だ」 「あ、そういうのがカーにありましたよ」 「そうかい。で、ね、男は死ぬ間際に河原に指で文字を書き残していた」 「何と?」 「〈カー〉」 「なるほど。それ、いただきましょう」  錦木氏は、皿の上の餠でも貰《もら》うようにいう。お嬢様は、あわてて、 「——ちょっと」  しかし、相手は頷きながら、 「『愛と死の安倍川、黄な粉は見ていた』」  もう、題まで考えている。 「これ、話にならないっていう例なんだよ——」  錦木氏は、逃げるのが一番とばかり、伝票を持って立ち上がる。お嬢様はあわてて後を追い、何事か耳打ちする。錦木氏はまたくしゃみをし、それから肩を落とした。 「なるほど、それでは仕方がない」  一旦そそくさと立ったもので座りにくくなったようだ。