收藏

louis vuitton草間彌生財布編集

「じゃあ、何しにこっちに」  その時、派手《はで》なマーブル模様の柄《がら》のシャツを着た、金髪の大男がどこからかすっと現れた。シルバーの指輪《ゆびわ》をはめた異様にごつい手には、なぜか書類のはさまったバインダーが握られている。 「よお、ちょっと聞きてえことあんだけどよ」  二人とも男の方を見なかった。駅前でこんな風に近寄ってきて、こんな風に話しかけるのはキャッチセールスに決まっている。 「つか、五分でいいんだけど。な?」  それにしても口の悪いキャッチだ、と佐貫《さぬき》は思った。せめて敬語ぐらい使え。二人は改札口の方へ歩いていこうとした。 「んん? ちょい待て、そこの小太り君」  佐貫の顔色が変わる。隣にいたみちるも思わずはっと息を呑んだようだった。「デブ」系のすべての単語は佐貫への禁句だ。高校に入ったばかりの頃《ころ》、「太ってない、がっちりしてるだけだ」と主張して、ケンカになったことがある。彼は足を踏《ふ》ん張って、大男の顔をにらみつけようとして——。 「やっぱそうだ。なんつったっけ君は。タヌキ?」 「……佐貫です」  裕生《ひろお》の兄の雄一《ゆういち》だった。家に遊びに行った時、何度か顔を合わせたことがある。 「そのネタ、前にも使いました」 「あー、わりいわりい。俺《オレ》ァ人の名前|憶《おぼ》えんの苦手《にがて》でよ」  ギャグじゃないのか、素《す》で間違えたのか、と激《はげ》しくツッコみたいところだったが、半袖《はんそで》から伸びた長い腕を見て佐貫は口をつぐんだ。  間近で見ると、見事に筋肉が引き締《し》まっていた。おそらく打撃《だげき》系の攻撃の方が得手《えて》だろうが、この筋肉なら柔道の有段者とも渡り合えるかもしれない。裕生の話ではまともに武道を習っていたことはないそうだが、身のこなしにもまったく隙《すき》がない。佐貫も運動神経が鈍いわけではないが、この男が相手では五秒と保たない気がする。 「で、そっちの彼女……なんだ、西尾《にしお》の妹じゃねーか。そういやあいつからメール来たけど、西尾もこっち帰ってくんだったよな?」 「……はい」  そう答えるみちるの表情になぜか苦《にが》いものが混じる。
表示ラベル: