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 さて何故《なぜ》、生物嫌《きら》いのマユが嫌悪《けんお》する集団行動を取っているのか。それはやはり、彼女の脇腹《わきばら》の肉付きに起因するわけだ。  四日前、起床《きしょう》したマユは猛省《もうせい》を自発的に啓発《けいはつ》した。「痩《や》せるのー!」と僕を往復ビンタしながら宣言し直し、マユは奮《ふる》い立った。そして僕のいない間に稲沢に何を吹き込まれたのか、減量の方法を学ぶために演劇部の一員として単独で身体を振ったり跳ねたりしているわけだ。他《ほか》の演劇部員は見て見ねふりという、賢明《けんめい》な態度を取っている。稲沢以外。  初日は僕も側で見学していたのだが、そうすると一分の間に三度はバカップルの目線が合い、その度《たび》にマユの身体が停止してしまうという結果になった。よってマユは泣く泣く、僕と距離《きょり》を取って頑張《がんば》ることにした。その決意は僕の心に使い捨てカイロを張り付け、目頭を煮沸《しゃふつ》消毒した。まあ、数日|経《た》っているので既《すで》に効能は失《う》せているけど。  とにかく、マユは減量の努力に明け暮れている。それを無下《むげ》に止める権利は僕にはない。指摘《してき》した張本人であるという理由もあり、また、彼女の場合は危険な方向性に暴走していく傾向《けいこう》が多々見受けられるので、健全な行いを否定するわけにはいかないという事情もある。 「あん」と目に運べば素直《すなお》に食べてくれるのは夕食で確認《かくにん》済みなので、極端《きょくたん》な断食に走ることはないと若干《じゃっかん》、安堵《あんど》して容認している。  ……しかしだな、稲沢君がだね、うーむ……赤札。 『何睨《にら》んでるの?』と伏見《ふしみ》の手帳。 「電波を送っているのです」 「機械も使わずに?」と、今度は肉声。 「機械に頼《たよ》らないのがプロなのです」嘘だけど。 「プロ電波か」  伏見が目を丸くしている。その反応から察したくないんだけど、無線界ではそんな内角|抉《えぐ》る危険球な単語が平常的に存在していたりするんでしょうか。 「プロ電波プロ電波プロ電波」  伏見のシャープペンが紙面を走る。自身が電波そのものとは、流石《さすが》、無線部の部長さんだけある。無免許カリスマ無線技士とか目指せる逸材《いつざい》を発見した。嘘だけど頑張ってくれ。 「あ、そういえばこの間の召集《しょうしゅう》令状なんだけど」  手帳を横着に捲《めく》り、眼球が左右に反復横跳《と》びと、伏見が挙動|不審《ふしん》になる。……何故《なぜ》に。 「白紙の意昧は、部活来いで合ってるよな?」  やや逡巡《しゅんじゅん》した後『うい』という返事を手帳で示す。その上にある『はい』をどうして使わないのか。
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