ルイヴィトンダミエアズールジェロニモス
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null「そや、テレビに映るんやさかいな」 「例の海坊主か」とうしろの刀自が言った。 「あれ、なかなかようできとったなあ。どないしてやるんや」 「簡単なんや」二人は同時にジャンパーのポケットから一組のストッキングを取り出した。 「アメリカの強盗映画見とると、こいつをすっぽり頭から冠《かぶ》るやろ。おれたちも初め試してみたんやが、あれはあかんわ。顔は引っつるし、メガネかけると冠れんし、というて冠ったあとからメガネをかけようと思うと耳が隠れとるよってかけようないし、それに先っぽがひらひらして、木の枝なんぞに引っかかったら困るよってな。やっぱり暴力ばかりで知恵のない連中がやることや。そこで兄さんが考えたんや」  正義は黒、平太は白のストッキングの一方で、頭まで隠れるように鉢巻《はちまき》をして、もう一方で目から下を覆って、うしろで結んで、サングラスをかける。 「これで出来上りや。しとっても楽やし、するのも取るのも簡単やし、効果満点やろ。覆面の特許いうもんがあったら取りたいぐらいやて、兄さん言うとったわ」  二人が振り向いて見せるのを、車内灯の明かりで検分して、 「なるほどなあ」と刀自が感心した。「それならテレビに映っても大事ないわ。あとは雷が来るのを待つだけやな」 「それやがな、おばあちゃん」正義が不安そうに、 「おれ、今んなって心配になって来たんやが、雷兄さん、無事来るやろか」 「来る」刀自はきっぱりと言う。 「あの子、度胸のええ子やし、何より魔法のお守りを持っとるよってな」 「あん?」 「それを持っとったら、だれでも言うこと聞かんならんという魔法のお守りや。……それ、あの光がそやないか」  右手の夜空を、さっと一条の光芒《こうぼう》が薙《な》いだのだ。ちょっとおいて、こんどは後光の中に山の稜線《りようせん》がくっきりと浮かんだ。  まだ音はきこえなかった。しかし、光は右に長い線を引いては消え、右の空を明るくしては消え、次第に強さを増してくる。 「まちがいないわ。今ごろこんな山道通る車ないよってな。やったわ。さすが兄さんや」